ESSAY 03 | 空中に「一時の大地」を創る仕事

霧がかった空の下、高所に組まれた複雑な足場の上で作業をする足場職人のシルエット

足場職人とは、ただ高い場所で作業をする人ではない。 誰かが安心して働ける「場」を、空中に生み出す人なのだと思う。

 

建物が完成すれば、足場は静かに解体されて消えていく。 形として残ることはない。 けれど、その見えない場所にこそ、職人の技術や覚悟が積み重なっている。

 

一本のパイプを掛けること。 一枚の床を渡すこと。 その一つ一つに、人の命を預かる重さがある。

 

だから足場職人は、速さだけではなく、強さだけでもなく、 「見えない危険を想像できる人」であるべきなのかもしれない。

 

風を読み、地面を感じ、仲間の動きを察しながら、 まだ形のない未来の建物を支える。

 

主役ではない。 名前が残ることも少ない。 それでも誰かの仕事を支え、街を支え、人の暮らしを支えている。 足場とは、建物を支える鉄ではなく、 人の営みを支えるための、一時の大地なのだと思う。